引越し前に必ず読みたい東京街図鑑

東京の街を定量・定性で分析。 一人ひとりのライフスタイルに合った「東京」を見つけるための街ガイド

吉祥寺は本当に人気がなくなっているのか?住みたい街ランキングのカラクリ

今月初め、不動産業界にあった今までの定説を覆す、あるニュースが駆け巡りました。

www.asahi.com

 

毎年引越しシーズンになると各社が住みたい街ランキングを発表するのですが、その中でも「吉祥寺」といえば、圧倒的なブランドを誇り、上位にランクインするというのが常、1位とって当たり前、そんな街でした。しかし、そんな吉祥寺が今年も11位以下となり、「吉祥寺は終わった」「吉祥寺、もうだめかもわからんね」という声もちらほら。朝日新聞が掲載したものだから、このニュースのインパクトは大きかったようです。

 

小中学校とドラマ・GTOのビデオを擦り切れるほど見た私にとって、「吉祥寺といえば、イケてる東京の象徴」であり、そんな吉祥寺が本当に人気がなくなったのか気になった私は、このランキングがどうやって作られているのか、公開されている情報を詳しく見てみることにしました。

 

【人気の街ランキング2016/賃貸編】トップ3は「目黒」「荻窪」「武蔵小杉」。常連「吉祥寺」は圏外!|オウチーノ de ヨムーノ

 

一番大事なデータの集計方法を探りに行くと、こんな記載がありました。

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■オウチーノ調査では「アクセス数が多い街」=「人気がある街」

このランキングは「アクセス数」の多さでランキングが作られているとのこと。アンケートをとっているわけではないこと、実際の問い合わせ数でもないことがポイントです。すなわち、このランキングでの「人気がある」とは「アクセス数が多い」という定義になります。

 

なお、サイト上にはここまでの情報しかないため推測ではありますが、「アクセス数」であれば、①実際に住むことを検討している人に加えて、②憧れの気持ちから、ただ閲覧している人もPVも当然カウントされていると考えてよいでしょう。

 

そして、もう一つ注目なのは「賃貸サイト」が対象であること。分譲を対象に含んでいないので、賃貸+分譲合計のランキングよりは都心部・準都心部が上位にランクインしやすい構造です。

 

まとめてみると・・・こんな感じになりますね。

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さて、今回朝日新聞で取り上げられたのはオウチーノのデータですが、他の会社が作るランキングはどのように作られているのか、調べてみました。まずは今月発表されたホームズの調査から見てみましょう。

 

■ホームズ調査では「問い合わせ数が多い街」=「住みたい街」

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今月発表されたホームズのランキングでは、「分譲」「賃貸」を2つに分解し、「問い合わせ数」を順位づけする、という集計方法です。先ほどのオウチーノの手法とは大きな差がありますね。手法が違うぶん、出てくる街の名前も大きく変わっています。

 

この集計方法では、いわゆる憧れ的な要素はほぼ除外され、「自分のお財布事情を踏まえた上で、現実的に住むことを考えられる街」が上位に来やすくなります。「買って住みたい街」では目黒を除く9つの街はすべて郊外。まさにこの集計方法の影響を大きく受けているといえます。

 

船橋が1位になったのはこの集計方法に大きく影響を受けているのですが、下記「マンション・チラシの定点観測」というブログでは詳細に分析されています。

1manken.hatenablog.com

 

さて、続いては、スーモと大手デベロッパーで構成されるメジャー7のランキングはどのように作られているでしょうか。

 

スーモ・メジャー7調査では「アンケートで回答が多い街」=「住みたい街」

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この2つは調査方法は「webアンケート」という点で共通しています。そして、「現実的に住めるかどうか」という要素は小さくなっているため、憧れ要素も含め、いわゆるブランドがあるとされる街が上位に来やすい構造です。この調査だと、吉祥寺は1位でこそないものの、2位をキープしています。これはオウチーノの調査で圏外に転落しているのと比較すると対照的ですね。結果として、多少の順位のズレはあるといえ、2社とも同じような街が並んでいます。

 

最後に、メジャー7が行っている一風変わったランキングもご紹介しましょう。「実際に住んでよかった」街ランキングです。

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このランキングだけは「実際に住んでみてよかった」街ランキングだけに、イメージだけではない、実際の住み心地を反映している側面が大きいといえるでしょう。そして、冒頭では圏外とされていた吉祥寺がなんとこのランキングでは第1位!この調査から判断するに、吉祥寺は居住者からは評価されていることがわかります。

 

■結論:各社の集計方法は大違い。一喜一憂せず、経年で同じデータを見るべし!

 

さて、ここまで4社のランキングを見てきました。集計方法を細かく調べてみてわかったことは、どの会社もすべて集計方法が違うということ。だから、上位に挙がってくる街の顔ぶれも違って当然なのです。

 

重要なのは、その集計方法の違いを踏まえ、適切な比較対象で比べるということ。何事もそうですが、比較というのは適切なもの同士を比べて、初めて意味が生まれます。これから引っ越しシーズン真っ盛りで「住みたい街ランキング」の話題も増えてくると思いますが、「あの街は人気」「あそこはもう落ち目」と口にする前に、冷静にデータを分析することが重要ですね。

 

データはすべて「切り取り方」なので、バイアスをゼロにすることはできません。ただ、今回紹介した4つのランキング(現時点での最新版)で吉祥寺が2位にランクインしているものが2つあり、加えて「住んでよかった街」ランキングでは1位であることを考えると、いまだ吉祥寺人気は健在、と私はとらえています。(過去ほどの圧倒的な強さはなくなりつつあると思いますが・・・)

一方、スーモとメジャー7のランキングでも吉祥寺がこれからさらに順位が下がるようなことがあれば、地殻変動が起きていると考えてもよいでしょう。

 

 

街は生き物。だから、ランキングもどんどん変わり続けます。

来年、再来年にはまた状況が変わっているかも。

 

次に伸びてくる街がどこなのか。「今のうちからそんな予想を立ててみて、来年答え合わせしてみる」というのも住みたい街ランキングのもう一つの楽しみ方かもしれません。

 

ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる

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